高校に入ってから成績が落ちた人って結構いるんじゃないかなぁ

実際僕もそうだったんですけど。

学力低下の一端を担っているといわれる、ゆとり教育。私もいわゆる「ゆとり世代」というわけだけれど、確かに小学生のころ何をしていたかなんていったら、遊び呆けてたとしかいえない。小学校二年生の時に、急に先生が「これから土曜日は週にかかわらずお休みです」というなり、僕らは土曜日はもちろんのこと、金曜日の放課後の運動場はスクールハットではなくランドセルを天高く放り投げてフライデーイブニングフィーバー状態。「今日は塾があるから…」という女の子に「よいではないかへるもんじゃなし」「ああっ御無体な」という感じで遊びに引きずり込み、校舎が閉まる夕方六時まで飽きもせず遊んでいたという記憶しかありません。

当然そんな環境で育った僕が勉強に向かうはずもなく、小学校六年生になり進学について先生と話し合うため、生徒と親御さんと担任の先生が三者面談で話した中、他の子がどうだったかはわかりませんが、少なくとも僕は「YouHei君の学力だと、公立を経て高校受験はキビシイので、中高一貫校をお勧めします」と言われました。僕はほとんどの友達が行く市内の公立校に行きたかったのですが、「公立行ったらおまえの人生メチャクチャになるぞ」という父の恫喝に負け、泣く泣く私立校に進学しました。

で、答案用紙に名前だけ書けば受かってしまうような私立校に入学したわけですが、メチャクチャ厳しい。結局、学力不振で高校受験が危うい子だけが集まる学校だからか、先生全員が「お前の腐りきった根性叩き直してやる」という気力マンマンな人たちばかりなのです。教室に入ってくるだけで生徒の背筋が伸びるという先生は何人もいましたし、宿題はこれでもかというくらいあったし、事前学習をしていないと答えられない質問をしてくる先生は、たいてい答えられずに俯いている生徒の自尊心をメッタ切りするように叱り飛ばす先生がたくさんいました。

ゆとり教育といって、学習内容、授業時数の削減・完全学校週五日制があったとしても、全国の学校の生徒が、学校にいる間に心に「ゆとり」を持ててたかどうかは別問題なわけです。

でまぁ、そんな環境なわけで、否応なしに勉強に向かうわけですよ、僕は。で、最初はやる気が続かずに気がついたらプレステ2のコントローラー握ってたりするわけですが、そんなことをしてると、またクラスメート全員が見ている中で先生の恫喝とともに一人サラシモンになってしまう。それがイヤで必死に勉強しました。そうすると、学内成績が80人いるうち70番台が定位置だったという僕が、徐々に徐々に成績が上向いてきて、中学二年生の三学期には学年2位という結果になったわけです。そうなると、デキナイ子のはきだめのような学校にて、「一つの成功例」として先生が見てくれるようになった。努力とその結果をきちんと先生が評価してくれる、それがなにより勉強に向かうモチベーションになっていったわけです。実はこれだって「ゆとり」を重視した学習指導要領の中にマニュアル化されたもの。結果として努力できた自分というモデルケースがある以上、「ゆとり」という言葉を嫌う人の言葉にクエスチョンマークが浮かばざるを得ないわけです。

で、全国模試の偏差値72という自信をひっさげて進学した県内でも有名な私立高。そこでようやく自分の甘さがわかった。授業についていけない。あの、科目数が多すぎるんですよね。国語が古文とか漢文とかになって、数学も数Ⅰ、数Bと科目が細分化されてくる。そうなると中学のように、前からくる勉強を丸のみにする要領じゃやっていけなくなる。そのうえ、これがまた生徒全員が勉強できるんだ。つまり、中学のようにサラシモンにされる心配がない。脅迫的なモチベーションで勉強していた僕にとってはうれしい反面致命的な問題。友達も増えてきて、勉強以外に楽しい要素もたくさん出てくる。

そうなるともう気分は小学生時代に逆戻りですよ。金曜日はフライデーイブニングフィーバー、土曜日は夜を徹して友達とサタデーナイトフィーバー。プレステ2のコントローラーを握っていた手も、少し成長してオチンチン握ってたり握ってなかったり。そんなかんじでどんどん勉強というものが頭の中からフェードアウトしてゆき、成績はなんとか学年順位を中の上を保っていたけど、勉強に向かう姿勢なんてものは中学の頃と全く違うものになってしまった。

まぁ勉強に関して言えば、残念な変わりようになってしまったかもしれないけど、それは勉強ってだけの話で、僕はそれ以上に大切なものを高校時代に得ました。それは今でもたまに連絡をくれる友達であったり、僕が病気で病院に入院していたときに、リンゴ四つとデラウェア二房もってきて、西日のキツイ日差しの中で三人でリンゴをまるかじりしたという思い出を作ってくれた友達であったりと、なによりも高校時代の中で築き上げた友達です。

そんな友達と、高校時代にバカやった経験を話したり、あの先生があーでこーで嫌だったわーなんて話せて、今でも友達が集まるとバカができる。そんな今の自分が一番好きです。