一期一会


こないだ予備校終りに自転車でぷらっと近所のグルメシティまで行ってのんびりしてました。そしたら段ボールを輪切りにしてトレーのようにしたものにカップラーメンをいっぱい乗せてカートで運んでる老人が。
駐車場のアスファルトのでこぼこで案の定、トレーはひっくり返りカップラーメンが散乱しました。
一応、見たものとしては放っておけないので、急いで拾い集められているその人に「僕も手伝います」と言いました。
すべて載せ終った後、その人が「あなたやさしいねぇ、ちょっと名刺出すわ」と名刺を下さいました。そしたらなんとその名刺には某大手運輸会社の代表取締役と書かれていたのです。びっくりしたと同時に「僕もなんか出さなきゃ…」と思って学生証を見せました。
その後老人が「あんた、ちょっと時間ある?」と。
呼ばれた先はその老人の車。何されるんだろうと思っているとおもむろにトランクから箱のようなものを出されるのです。その箱を持ちながらその老人は自分の半生を話し始めました。戦争の話、学徒動員で招集されたこと、先輩からの厳しい指導、いろいろと話してくださいました。
そして最後に「僕は色々と辛い経験をしてきた。だから僕は人にやさしくしたいんだ。君はその年でそんなに人にやさしくできるんだから。これを君にあげる」とその箱を僕に下さいました。了解を得て箱を開けてみると中には「一期一会」と立派な額縁に入っている書が入っていました。


一度きりの人にでも、その人に対して最善を尽くす。カップラーメン好きな老人が教えてくれたことです。